小説家のお仕事って何だと思います?
小説家の仕事と聞いて何を思い浮かべますか?
「そりゃ小説を書くことだろ」
とみんな頭に浮かんでいると思います。
物語を0から練り上げ1冊の本を書き上げ
書店(もしくは電子書籍)に小説として並び私達が手に取る。
これが小説家のお仕事だと自分も思ってました。
ただ、それだけではないんです。
例えばミュージシャンがドラマやアニメの主題歌を楽曲提供することがありますよね?
タイアップと書いた方が分かりやすいかもしれません。
小説家にも同じように企業から発注されて文章を書くお仕事があるんです。
・雑誌社
・食品メーカー
・大学
・ビール会社
など、小説家は自身の小説を執筆する傍ら様々なお客さんから依頼を受け文章を書くお仕事をしています。
ただ、このようなお仕事の文章はタイアップ先のWebサイトや雑誌などに掲載されるため
読書が好きな方でも目にすることはあまりないかもしれません。
今回紹介する「発注いただきました!」は「桐島、部活やめるってよ」や直木賞を受賞した「何者」など多くのヒット作を生み出している
朝井リョウ先生の
「書いたのにキャンペーン終了と共に葬られちゃうのはもったいない!」
という想いから生まれたタイアップの作品集となっています。
ワクワクが止まらない「お仕事の裏側」
この本の魅力の一つがユニークな構成です。
「発注内容」→「作品」→「感想戦」
この構成が20本繰り返されています。
・発注内容:企業からどんな依頼があったか
・作品:発注の内容に対する作品
・感想戦:書き終えての振り返り
「どんな依頼があって、どのように応えて、振り返ってどうなのか」
お仕事している方は「その経験あるな〜」と頭をよぎるのではないでしょうか?
そして小説家のこれ気になりますよね。
発注内容がとにかく面白く、本書では企業名も実名で掲載されています
・アサヒビール:「エーデルピルス」という商品の価値を広められるような文章
・KADOKAWA:aikoの楽曲を題材にした小説
・森永製菓:キャラメルが登場する掌編
など本書ではもう少し詳細な発注内容も書いてありますが、20本もの作品が収録されています。
「aikoの楽曲を小説に?」「商品の価値を広める?」
消費者である自分が知ることが出来ない「発注内容」の数々。
裏側を知れてワクワクが止まらない読書体験でした。
小説家ってすげぇ
この本の自分のおすすめの楽しみ方は
発注元と発注内容を読んですぐに作品を読まずに
「自分ならこんな作品にするかもな」
と少し考えてみることです。
「依頼の目的はこれだから。読む人のカテゴリーはこんな感じだからこんな作品はどうだろう?」
少し小説家気分が味わえます。
その後に作品を読むとぶっ飛びます。
「このお題からこんな感じの作品が生まれるの!?」
とプロの小説家の凄さに圧倒され
自分の想像力やアプローチの差に愕然とします(笑)
そして作品で終わりではなく感想戦パートでは作品の背景や
朝井リョウ先生の少し自虐的な振り返りでクスリと笑ってしまいます。
この「発注内容→作品→感想戦」が20本も収録されています。
「次の発注にはどんな作品で応えてくれるんだ?」
と気になってどんどん読み進めてしまいました。
普段の作品だけではなく文章でニーズに応えていく小説家のかっこよさに撃ち抜かれました。
作品として面白いのはもちろんのこと
お仕事で企画やマーケティングする方々にとっては「こんなアプローチが」と
リラックスして頭を柔らかくするにはおすすめの本ですのでぜひ読んでみてください。